「認知症高齢者」とは?
認知症は、脳の病気や障がいなどの原因によって、記憶や理解力・判断力が低下し生活に支障が出てくる状態をいいます。認知症のうち最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、一般的にゆっくりと進行するタイプの認知症です。次に多いのが「血管性認知症」で、障がいされた脳の部位によって症状が大きく異なり、「まだら認知症」と呼ばれたりもします。「レビー小体型認知症」は、現実には見えないものが見える幻視、手足の震え、歩行が小刻みになるなどといった特徴があります。この3つのタイプの認知症で全体の約9割を占めています。
「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」
増え続ける認知症高齢者
日本における認知症の有病率調査の研究によると、令和2(2020)年の認知症患者は602~631万人(有病率17.2%~18.0%)と推計されています。認知症の有病率も年々上昇すると考えられており、令和42(2060)年には認知症の患者数が850~1,154万人(有病率25.3%~34.3%)にまで増加し、65歳以上の方の3~4人に1人が認知症になると推計されています。
「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」
東村山市における認知症高齢者の現状
東村山市の人口推計を元に、前出の調査で示された有病率をあてはめて認知症高齢者の人数を推計すると、下位の推計値でも2040年には1万人を超えると予想されます。また、2050年から2060年にかけて65歳以上人口は減少に転じていますが、有病率が上昇するため認知症高齢者の人数は増加するという推計になっています。
東村山市地域福祉計画基礎調査より(平成29年3月)
認知症がもたらす社会課題
道に迷って帰れない
認知症の方は、散歩や買い物に出かけたものの、途中で自分がどこにいるか分からなくなってしまったり、道に迷って帰れなくなったりすることがあります。誰かが気付いて声をかけてくれたとしても、自分の名前や住所が言えないと、自宅へ送り届けてもらうことも難しくなります。最悪なケースでは、線路内に迷い込んでしまい電車にひかれて亡くなってしまった例もあります。
悪質商法の被害
買ったことをすぐに忘れてしまうので、同じものをいくつも購入してしまうことがあります。また、自分にとって必要なものかどうか、適正な値段かどうか、騙されていないかどうかといった理解や判断ができなくなると、悪質な業者による消費者被害にあいやすくなります。被害にあった人たちの名簿が、こうした悪質な業者に出回ってしまい、同じ人が何度も被害にあうという例も珍しくありません。
様々な手続きや契約、
車の運転などが
できなくなる
銀行の通帳や印鑑などしまった場所を忘れてしまい、窓口で再発行を繰り返すので周囲の人がおかしいと思い、本人が認知症になっていることが分かったという例はよくあります。確定申告や年金の届け出など、今まで一人でできていたことが難しくなってくると、必要な支払いや大事な手続きなどがそのまま放置されてしまうことになります。また、認知症が進行すると、操作を間違えたり一方通行を逆走してしまうなど、車の運転による事故につながる恐れもあります。
介護者のストレスや
疲労感の増加、虐待
認知症になっても身体的な機能は維持されていることが多いので、介護者が知らないうちに外出してしまう心配がある場合は、24時間注意していなければなりません。また、本人の幻覚や妄想による言動に対処することはとても難しく、介護者にかかるストレスや疲労感は大変大きいものがあります。
こうした介護者のストレスは虐待の要因になることがあり、在宅で虐待を受けた高齢者のうち7割以上に認知症の症状が見られたという調査結果があります。(令和元年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果)
支援やサービスを
拒否する、孤立死の恐れ
客観的には支援が必要な状態であると思われるのに、頑なに支援を拒否するケースがあり、セルフネグレクト(自分自身による世話の放棄・放任)と呼ばれています。具体的には、ゴミ屋敷や動物の多頭飼育といった極端な不衛生状態、医療や福祉サービスの拒否といった形で表われることが多く、死後しばらくたって発見されるという孤立死につながることもあるので注意が必要です。
認知症によって理解力や判断力が低下することで、本人の「支援を求める力」も弱まった結果、セルフネグレクトの状態になることがあります。
東村山市社協が目指す課題解決のかたち
認知症によって引き起こされる困りごとの減少
課題解決のための私たちの取り組み
東村山市社会福祉協議会は、①認知症を予防する、②認知症の方を地域で見守り支える、③認知症を早く発見して早く相談やサービスにつなげる、④認知症によって引き起こされる権利の侵害を防止する、といった活動に取り組むことで、認知症によって引き起こされる困りごとを減少させていきます。
認知症を予防する
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ふれあい・いきいきサロン
ふれあい・いきいきサロンとは、歩いて行ける距離で、お茶を飲みながらのおしゃべり、健康づくりや生きがい活動、子育てや介護に関する情報交換などを行う仲間づくりの場です。サロン活動を通じて住民同士のつながりをつくり、孤立や閉じこもりを防止する効果もあります。市内では「家族介護者のつどい」も定期的に開催されています。サロンは地域の人たちが主体となって開催し、社協は開催に係る費用を助成したり、サロン立ち上げや運営面での相談に応じています。
認知症の方を地域で見守り支える
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ふれあい事業
一人暮らし高齢者を対象に、週3回乳酸菌飲料をお届けして安否確認を行う「ふれあい訪問事業」、週に1回電話で話し相手になる「ふれあい電話訪問事業」を行っています。いずれも社協が独自に行う「制度の狭間を埋めるサービス」で、会費や寄付金を財源として実施しています。
認知症を早く発見して早く相談やサービスにつなげる
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中部地域包括支援センター
高齢者の生活に関するあらゆる問題に関して、保健・医療・福祉の資格を持つ専門の職員が相談に応じています。また、認知症の方を地域で支えることを目的として、「認知症サポーター養成講座」を開催しています。
認知症によって引き起こされる権利の侵害を防止する
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福祉サービス総合支援事業
認知症や知的障がい、精神障がいなどによって判断能力が不十分な方を対象に、生活や財産に関する権利擁護相談を行っています。また、必要に応じて法律相談や福祉サービスの利用支援、金銭管理サービス、書類等預かりサービスをご利用いただくことができます。 -
成年後見制度推進事業
認知症などで判断能力が不十分になった場合に、本人に代わって財産を保護し、日常生活を送る上で必要な契約等を行うことで、本人の権利を守るのが成年後見制度です。社協では、成年後見制度の普及啓発、成年後見制度に関する相談、成年後見人等候補者の紹介、市長申立の支援、成年後見人の支援、市民後見人の養成などを行っています。