「社会的孤立」とは?
「社会的孤立」とは、家族やコミュニティとほとんど接触がない状態をいいます。本人の感情とは関係なく、他者とのつながりのない状態です。現在、日本では、「つながり」や「コミュニティ」が希薄になりつつあります。このような状況が、私たちに望まない「孤立」「孤独」をもたらし、心身ともに影響を与えています。
社会的なつながりの喪失が与える影響
社会的孤立はご本人の健康や幸福感だけではなく、地域の課題にも繋がります。
健康
孤食の高齢者は共食に比べ
死亡率1.2倍
孤独な人は要介護状態や
うつ病になりやすい
1日に吸うのと
同じくらい健康に悪影響
幸福感
困ったとき相談にのってく
れる人がいないと幸福感が低い
コミュニティを持たない人の
幸福感は持つ人の1/5減少
家族そろって食事をとる頻度が
増えると幸福感は約3倍増加
地域
つながりが希薄になると
犯罪が増加
つながりが希薄になると
出生率が低下
世界トップレベルの孤立が多い国“日本”
OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、家族以外との付き合いがほとんどない人の割合は、先進国の中で日本が最も高くなっています。日本の社会的孤立度の高さの原因は、戦後の経済発展の中で血縁・地縁・社縁などが失われ、新しい時代に順応したつながりが形成されていないためと分析されています。
社会的孤立の状況(OECD諸国の比較)
友人、同僚、その他宗教・スポーツ・文化とグループの人と全く、あるいはめったに付き合わないと答えた比率(%)
注:原資料は世界価値観調査1999-2002。英国はグレートブリテンのみ。
資料:Society at a Glance | OECD Social Indicators - 2005 Edition
さらに、つながりの希薄さは、ここ数年の新型コロナウイルス感染症の流行が長期化する中で、より一層深刻さを増しています。
東京都健康長寿医療センター研究所調べ
このような「社会的孤立」の問題は、下記のような課題の根本的な構造要因として作用しているといわれています。自分を受け止めてくれる居場所がなく、引きこもってしまう人や命を落としてしまう人が増えています。いまや「孤立」「孤独」の問題は世界的にも注目されている課題です。
そのため日本では、社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について総合的な対策を推進するため、内閣官房に、孤独・孤立対策担当室を設置しました。
東村山市の社会的孤立の現状
OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、家族以外との付き合いがほとんどない人の割合は、先進国の中で日本が最も高くなっています。日本の社会的孤立度の高さの原因は、戦後の経済発展の中で血縁・地縁・社縁などが失われ、新しい時代に順応したつながりが形成されていないためと分析されています
東村山市地域福祉計画基礎調査より(平成29年3月)
「隣近所の人とは、どの程度の付き合いをしているか。」との問いに対し、「隣近所にどのような人がいるかよくわからない」以下と回答した割合は、11.9%。「会えば挨拶をする程度」を合わせると76.3%となる。
この調査結果を市内全域にあてはめると、人口約15万1500人(2021年8月現在)中、約1万8千人が「隣近所との付き合いがほとんどない」状態にあると推計されます。
東村山市においても社会的孤立に関連した社会課題がさらに増すと考えられます。
なぜ社会的孤立になってしまうのか
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仕事以外の
繋がりが少ない -
退職後に人と繋がれる
機会がない -
コミュニケーションツールの
進化についていけない -
近所に存在を
知られていない -
つながる
機会・場所が少ない -
家族以外の人と
交流がない人の増加 -
同居の家族以外に
頼れる人がいない
社会的孤立の実態
知的障害のある兄弟
助けが無ければ空腹で…
大学への進学を
あきらめてしまった
知的障害のあるご兄弟は、ご両親と一緒に1軒屋で暮らされており、精神障害もあるお兄さんは基本的に家にいて、軽度の知的障害の弟さんは施設に通っていました。ご両親はご兄弟を大切にされていましたが、父親が急逝され、後を追うように母親も亡くなられました。ご両親が生活のお世話や財産管理をしていたこともあり、ご兄弟は急に、全てを自分たちで行わなければならなくなりました。しかし、ご自身でできるわけではなく、繋がりのある人もいない状態で、生活できるお金もなくなり、食事も満足に取れなくなりました。お腹が空いて助けも必要としていますが、ご兄弟がそのような状況にあることは、誰も知りません。誰に助けを求めていいかもわかりません。ある日、あまりの環境に弟さんは隣の人に助けを求めて、そこから本会に連絡があり、支援を始めることができ、ちゃんとした食事もできるようになりました。しかし、もし、隣の方に助けを求めなければ、このご兄弟は餓死をしていたかもしれません。
社会的孤立の結果の“孤独死”
孤立は、先に述べた通り健康面や幸福感、地域社会など私たちの生活に大きな影響を与えています。特にその中で取り返しのつかない影響は“孤立死”です。
孤立死は年々増加傾向にあります。特に高齢者の孤立死は10年前と比べると約1.8倍の増加となっています。
孤立死の6割の原因は”病死“です。周囲に自身の異変を伝えることが出来たら、助かった命があったかもしれません。救急対応をしてもらえないまま自室で死を迎える場合があります。
また、約1割の原因は”自殺“です。周囲に困ったときに相談にのってくれる人がいたら、助かった命があったかもしれません。悩みごとを話せないで抱え込んでしまい、死を選んでしまう場合があります。
東村山市社協が目指す課題解決のかたち
望まない社会的孤立をなくす
課題解決のための私たちの取り組み
地域の居場所づくり
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ふれあい・いきいきサロン
歩いて行ける距離で、お茶を飲みながらのおしゃべり、健康づくりや生きがい活動、子育てや介護に関する情報交換などを行う仲間づくりの場です。サロン活動を通じて住民同士のつながりをつくり、孤立や閉じこもりを防止する効果もあります。市内各所で定期的に開催されています。サロンは地域の人たちが主体となって開催し、社協は運営費用の助成を行ったり、サロン立ち上げや継続運営などの相談に応じています。
ゆるやかに見守る仕組みづくり
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ふれあい事業
一人暮らし高齢者を対象に、週3回乳酸菌飲料をお届けして安否確認を行う「ふれあい訪問事業」、週に1回電話で話し相手になる「ふれあい電話訪問事業」を行っています。いずれも社協が独自に行う「制度の狭間を埋めるサービス」で、会費や寄付金を財源として実施しています。 -
見守りネットワーク
地域でのゆるやかな見守りを地域住民、自治会や福祉協力員会、関係団体が連携して実施しています。日常で、あいさつや声かけなどによる関係づくりを行い、普段とは違う様子を見かけたら、包括支援センターなどの専門機関へ連絡をして対応する仕組みです。社協は見守り団体ネットワーク会議を開催し、情報交換などを通じて活動の支援を行っています。
地域ごとの課題や特性に応じた地域活動の展開
地域住民、福祉施設やボランティア、関係団体などの方々と地域福祉活動計画(住民活動計画)を策定し、一緒に地域の支えあいの仕組みづくり、福祉のまちづくりを進めています。
社協は計画を進めるための重点アクションチーム、推進委員会とともに、各地区での取り組み、活動の支援を行っています。